旭堂南湖
プロジェクト ─2022
- TITLE
- 旭堂南湖
講談師の旭堂南湖が盛岡市の歴史的景観地区である鉈屋町に滞在し、新作の講談のリサーチや発表などを行います。滞在期間中は市内のさまざまな場所でミニ講談や体験ワークショップなども開催予定。
- AREA
- 盛岡市|鉈屋町界隈
- ARTIST
- 旭堂南湖 Nanko Kyokudo(講談師)
- 滋賀県出身、なみはや講談協会所属。1999年に3代目旭堂南陵(無形文化財保持者)に入門。古典講談を継承しながら、日本各地の人物や伝説、民話を取材して、創作講談を披露する。近年は伝統芸能に新風を吹き込むため、市井の人々から聞いた怪談や不思議な話を、講談の語り口を用いて語るなど、新しいスタイルにも挑戦。学校を対象とした講談鑑賞公演やワークショップ、社会人を対象とした講談教室など、幅広く活動中。2003年大阪舞台芸術新人賞、2010年文化庁芸術祭新人賞、2021年滋賀県文化激励賞を受賞。著書『旭堂南湖講談全集』(レベル)、オーディオブック『講談 古典怪異譚 1~8巻』『講談 現代怪異譚 1~5巻』『こども講談 1~7巻』(パンローリング)
- ARTIST
- 旭堂一海 Ikkai Kyokudo(講談師)
- 鳥取県出身、なみはや講談協会所属。1999年生まれ、2019年に旭堂南海に入門。新進気鋭の若手講談師。持ちネタを着実に増やして、講談師の先輩や講談ファンからも「期待の若手」と評判が高い。
- 滞在期間
- 2022年8月23日(火)~29日(月)、1月9日(月)~15日(日)
- 内容
- 地域交流と新作の講談のリサーチ・発表。
- 主催
- 公益社団法人日本芸能実演家団体協議会 アーツライブいわて実行委員会 NPO法人いわてアートサポートセンター 文化庁 統括団体によるアートキャラバン事業(コロナ禍からの文化芸術活動の再興支援事業)『JAPAN LIVE YELL project』 アーツライブいわて2022
- パートナー
- もりおか町家物語館
滞在地域
盛岡市(鉈屋町界隈)
江戸から明治にかけて、北上川舟運の起点・街道の城下玄関口として栄えた鉈屋町。当時の暮らしを今に伝える「盛岡町家」が街道に並び、風情ある景観が広がります。大正期の平民宰相・原敬が眠る「大慈寺」も付近にあり、歴史的にも重要な地域です。
この界隈は江戸時代から良質な湧水が豊富で、今でも生活用水として使われています。今回の滞在制作のベースとなる「もりおか町家物語館」は、水に恵まれた鉈屋町で、平成の時代まで営業を続けた造り酒屋・旧「岩手川酒造」の酒蔵や木造の母屋を修復した、かつての賑わいを体験できる盛岡市のスポットのひとつです。
イベント
EVENT1
- TITLE
- 講談師・旭堂南湖 ミニ公演in盛岡
盛岡の風情が残る街・鉈屋町でのアーティストインレジデンス事業(IWATE AIR/AIR)の一環として、滞在アーティストによるミニ公演会を開催します。今回、上方講談師・旭堂南湖と旭堂一海が、講談や怪談、各地をまわって集めた伝説や不思議話を披露。迫力ある話芸をぜひご堪能下さい。
- 日時
- 怪談会|2022年8月26日(金) 開場 17:00/開演 19:00(終演予定 20:00)
講談会|2022年8月27日(土) 開場 14:30/開演 15:00(終演予定 16:00)
- 会場
- 怪談会|そば処東家本店 ※仮店舗
講談会|三㐂亭(さんきてい)
- マップ|そば処東家本店 ※仮店舗
- マップ|三㐂亭(さんきてい)
- 入場料
- 怪談会|500円(1そば付き)
講談会|無料(投げ銭歓迎)
- 予約方法
- 予約専用メールフォームorお電話にて下記項目をご登録ください。
1.氏名 2.電話番号 3.ご希望の回 4.人数
※8月26日(金)怪談会の入場料は当日精算となります。
※いずれの回も定員に達し次第、受付を終了いたします。
- メールフォーム|8月26日 怪談会
- https://form1ssl.fc2.com/form/?id=63f0f763002a30ca
- メールフォーム|8月27日 講談会
- (※定員に達したため受付を終了しました)
- 予約受付・お問い合わせ
- もりおか町家物語館
〒020-0827 岩手県盛岡市鉈屋町10-8
TEL 019-654-2911
https://machiya.iwate-arts.jp/
- 主催
- 公益社団法人日本芸能実演家団体協議会 アーツライブいわて実行委員会 特定非営利活動法人いわてアートサポートセンター 文化庁 統括団体によるアートキャラバン事業(コロナ禍からの文化芸術活動の再興支援事業)「JAPAN LIVE YELL project」 アーツライブいわて2022
- 協力
- 特定非営利活動法人盛岡まち並み塾、株式会社東家
EVENT2
- TITLE
- 創造的な地域活性化へのアプローチ ~アーティスト・イン・レジデンスの事例より~
この度、令和4年度文化芸術研修会を下記のとおり開催することとなりました。
岩手県内での多様な地域づくりや文化芸術環境づくりに取り組むみなさま、ぜひご参加ください。
近年、地域の文化施設・観光施設・宿泊施設、廃校などの遊休施設等を活用して芸術家の滞在を受け入れ、その芸術家による創作活動や地域との交流活動を通じて、地域の活性化等に繋げる取組として「アーティスト・イン・レジデンス(以下A.I.R.)」事業が注目を集め、コロナ禍においても、地域観光・地域ブランドのPR事業、移住定住促進事業、遊休施設のリノベーション事業として、全国各地の自治体やNPO等によって取り組まれています。
盛岡広域振興局においても、文化施設の集積や多様な文化芸術団体が活動している等の地域特性を踏まえ、文化施設や文化芸術団体等が行うA.I.R.などの取組を支援する旨、「いわて県民計画(2019~2028)地域振興プラン(県央広域振興圏)」(2019~2022)に掲げ、文化芸術コーディネーター(県央広域振興圏)との連携の下、取り組んできました。
本研修では、文化施設をはじめ市町の職員等を対象に、当該取組の先進事例やこれまでの当圏域の取組事例の紹介等を通じ、文化芸術活動の振興のみならず、地域づくりや地域の活性化をはじめ、地域が抱える課題解決に向けた活用法としての理解を深める機会とします。
- 日時
- 令和4年8月29日(月)10:00~12:00
- 場所
- もりおか町家物語館 浜藤ホール
- マップ
- プログラム
- (1)レクチャー
「創造的な地域活性化へのアプローチ〜アーティスト・イン・レジデンスの事例より〜」
講師:NPO法人いわてアートサポートセンター坂田雄平
(2)アーティストインタビュー
「盛岡市鉈屋町でのアーティスト・イン・レジデンスを通して」
講談師:旭堂南湖
聞き手:坂田雄平
- 対象
- ・県・市町職員(文化・観光・移住定住・ブランディング・地域づくり等)
・文化施設職員、県・市町芸術文化協会関係者等、その他、関心のある民間団体・文化関係者等
- 申込方法
- お申込締切:8月19日(金)
下記のURLよりお申し込みください。
https://forms.gle/2qEdcTjj8XtrtEwM8
- 主催
- 盛岡広域振興局 NPO法人いわてアートサポートセンター
EVENT3
- TITLE
- 旭堂南湖鉈屋町講談会
上方講談師・旭堂南湖と旭堂一海が22年8月、23年1月の2回にわたって盛岡に滞在しリサーチした成果発表として、盛岡にまつわる新作講談の公演会を行います。
- 日時
- 2023年1月14日(土) 開場 13:30/開演 14:00(終演予定 16:00)
- 会場
- もりおか町家物語館 浜藤ホール
- マップ
- チケット
- 一般 1,000円
中学生以下 500円
(当日各500円増)
- チケット取扱
- もりおか町家物語館(9:00-18:30/毎月第4火曜日休館)
- プレイガイド
- 風のスタジオ/プラザおでって/Cyg art gallery/カワトク
- お問い合わせ
- もりおか町家物語館
〒020-0827 岩手県盛岡市鉈屋町10-8
TEL 019-654-2911
https://machiya.iwate-arts.jp/
- 主催
- 公益社団法人日本芸能実演家団体協議会 アーツライブいわて実行委員会 NPO法人いわてアートサポートセンター 文化庁 統括団体によるアートキャラバン事業(コロナ禍からの文化芸術活動の再興支援事業)『JAPAN LIVE YELL project』 アーツライブいわて2022
- 制作
- もりおか町家物語館
EVENT4
- TITLE
- 学校アウトリーチ(前期滞在・後期滞在)
大慈寺小学校5学年を対象とした、全3回の講談ワークショップの詳細です。
- 日時
- 8月24日(水) 10:25〜11:10
8月26日(金) 9:20~10:05
1月13日(金)
- 場所
- 盛岡市立大慈寺小学校
- 対象
- 大慈寺小学校5年生
- 内容
- 第1回目(8月24日)
実際に講談を聞きながら、講談について学ぶ
第2回目(8月26日)
日常を題材にするなどして実際に児童が講談を作成、発表
第3回目(1月13日)
児童による成果発表会
EVENT5
- TITLE
- 地域リサーチ(前期滞在)
原敬記念館、鉈屋町界隈、大國神社・いたこ塚、北上川 新山河岸にて盛岡や鉈屋町についてのリサーチが行われました。
- 日時
- 8月24日(水) 14:30〜16:30
8月25日(木) 14:00〜16:30
8月26日(金) 14:30〜15:30
8月27日(土) 11:00~11:30
- リサーチ先
- 8/24 原敬記念館
8/25 鉈屋町界隈
8/26 大國神社・いたこ塚
8/27 北上川 新山河岸
- リサーチ内容
- 8/24 原敬に関するリサーチ
8/25 鉈屋町ガイドツアー
8/26 いたこ塚に関するリサーチ
8/27 もりおか丸による北上川運行体験
EVENT6
- TITLE
- 地域交流プログラム(前期滞在)
大慈清水御休み処、もりおか町家物語館にて鉈屋町民を対象とした講談会・座談会が行われました。また、そば処東家、三㐂亭にて盛岡市民を対象とした講談会・座談会が行われました。
- 日時
- 8月23日(火) 18:30〜19:30
8月25日(木) 18:30〜19:30
8月26日(金) 19:00~20:00
8月27日(土) 15:00~16:00
- 場所
- 8/23 大慈清水御休み処
8/25 もりおか町家物語館
8/26 そば処東家本店 ※仮店舗
8/27 三㐂亭
- 対象
- 鉈屋町民、盛岡市民
- 内容
- 8/23 ミニ講談会+交流座談会
8/25 怪談座談会
8/26 ミニ怪談会+交流座談会
8/27 ミニ講談会+交流座談会
- 新型コロナウイルス感染症拡大防止対策について
- ①37.5度以上の発熱、咳やのどの痛み、強い倦怠感などの症状がある方のご来場はお控えください。ご来場の際にはマスクを着用し、公演中もはずすことの無いようにお願いいたします。 ②客席は、舞台からの距離を確保し、客席数を制限しております。 ③空調設備を適切に稼働させ、必要に応じて扉を開放するなど、十分な換気を行います。 ④お花やプレゼント・差し入れはお断りしております。 ⑤チケット販売の際にお伺いした個人情報は当日の受付のほか、新型コロナウイルス感染者が発生した場合にのみ保健所等の公的機関へ提供することがありますのでご了承ください。
映像
旭堂南湖 鉈屋町講談会
公演:2023年1月14日(土)
会場:もりおか町家物語館浜藤ホール
インタビュー
レポート
盛岡滞在記 作・旭堂南湖
講談師になった時の夢は、「日本全国で講談をしてみたい」でした。
ところが、大阪に拠点をおいて活動してみると、仕事の中心はほぼ関西圏。講談師になって二十四年目ですが、たまに東京で仕事をしたり、年に一度、徳島県に呼んで頂いたり、石川県や愛知県、長野県や静岡県にも行きました。
振り返ってみると、東北に行くことはほとんどありませんでした。
この度、ご縁がありまして、盛岡に、二〇二二年夏に一週間、二〇二三年冬に一週間、滞在することができました。
一緒にいくのは、後輩で、若手講談師の旭堂一海さん。豊かな感受性を持つ若い講談師が、盛岡で見たこと、聞いたこと、感じたことを人生の財産にして欲しいと思い、一緒に行こうと誘いました。
一海さんは、飛行機に乗るのも、初めてで、飛行機が空を飛ぶと、興奮した様子で、外の景色をじっと眺めていました。長野県の上空を飛んでいる時に、
「向こうに、綺麗な山が見えるのですが、あれはなんという山でしょうか」
「富士山やがな」
空から眺める富士山は初めてだったようです。
花巻駅に着くと、今回、お世話になる「もりおか町家物語館」の千葉さんが迎えに来てくれました。
車中で話をしながら、盛岡駅へ。ここで、盛岡レーメンを頂きました。
盛岡三大麺は、盛岡レーメン、じゃじゃ麺、わんこそばだそうです。
大阪で韓国レーメンを食べたことはありますが、本場の盛岡レーメンは初めてでした。ピリ辛で、上にスイカが乗っていたのが新鮮でした。
のちに、じゃじゃ麺も頂きました。
それから、わんこそばを食べたことも思い出深いです。
「じゃんじゃん、どんどん」の掛け声とともに食べていきます。わんこそば十五杯分で、普通のお蕎麦一杯分だそうです。男性なら五十杯、女性なら三十杯ぐらい食べるのが平均だそうです。
私は大食いというわけではありませんので、まあ、軽く二十杯ぐらい食べてやめようと思っていると、どういう訳か、百四杯食べてしまいました。
美味しいので、スルスルと食べてしまいました。ただ、食べ終わって、しばらくお腹がはち切れそうでした。
鉈屋町に拠点をおいて、地域交流しました。
大慈寺小学校には、合計三回行きました。講談鑑賞、生徒たちの講談練習、そして、発表会です。
講談というツールを使って、コミュニケーションを取ることは非常によいことに、私も改めて気が付きました。
地域のことを取材する。取材したことを台本にまとめる。台本を覚えて、リズムよく読む。それを人前で発表する。
講談を使って、地域のことを調べ、発表することは普通の発表よりも、楽しくて、人生に役に立つように思います。
鉈屋町では、大坊さんに各地を案内して頂きました。
原敬記念館や原敬の墓所がある大慈寺へも行きました。
わんこそばを食べた東家さんで、怪談会。その他、鉈屋町でも、講談会を行いました。
冬になると、道路は雪だらけだろうと、雪靴を買って、張り切って大阪から履いてきたのに、盛岡はあまり雪がありませんでした。
大慈清水御休み処でミニ講談会をした時、スタッフの方が楽屋にお水を持ってきて下さいました。飲むと美味しかったので、一海さんが「これは湧き水ですね」。隣に湧き水がくめる所があります。スタッフの方に聞いてみると水道水でした。
それから、千葉さんに車で連れて行って頂いた宮古や、遠野も印象深いです。東日本大震災の遺構を見学するのは初めてでした。
若い一海さんにも非常に勉強になったと思います。
遠野では語り部さんによる遠野昔話を聞かせて頂きました。カッパ淵、座敷わらし、オシラサマ、瓜子姫、蜂ブンブンなど。心地よい語りでした。
過ぎてしまえば、あっという間の二週間。浜藤ホールでの、講談会も盛況で、私は盛岡藩士の相馬大作の母を描いた「相馬大作の母」。一海さんは「原敬物語」を披露しました。
この二週間で、つくづく感じたのは、岩手の方は優しい。特に、盛岡の方は優しい。
この出会いを大切に、今後も盛岡で講談会を続けていきたいと思いました。
NPO 法人いわてアートサポートセンターの皆様、有難うございました。
鉈屋町の皆様、有難うございました。
特にお世話になった千葉さん、有難うございました。
最後に、鉈屋町の方に話を聞いて、作ったミニ講談を掲載します。
ミニ講談「三面地蔵尊の由来」
鉈屋町の皆さんに、地元の伝わる不思議な話はないかと、伺いますと、こんなお話を教えて頂きました。講談として、まとめてみました。
昭和初期に、この鉈屋町に、長屋がありまして、そこにすんでいたのが、鳥居さんという男性。ある晩のこと、不思議な夢を見ました。お地蔵さんが、枕元に立って、
「私は長い間、土の中に埋もれているが、世の中の人々を守るため、世の中に出してほしい」
鳥居さん、目が覚めて不思議に思った。これまでこんな夢を見たことがなかった。それから、家を出て、やってきたのが、藤村さんという、大家さんのところ。
「大家さん。おはようございます。家賃を持ってきました」
「ああ、いつもちゃんと持ってきて貰って、有難い。さあ、上がって上がって。今、お茶を入れるさかい」
と大家さんが、お茶を入れる。
「鳥居さん、聞いておくれ。わしは、昨晩、妙な夢を見てなあ」
「へえ、どんな夢ですか」
実はなと、これから大家さんが語りだしたのが、お地蔵さんが、枕元に立って、
「私は長い間、土の中に埋もれているが、世の中の人々を守るため、世の中に出してほしい」
と、こういう夢を見た。鳥居さんが驚いて、
「大家さん。実は私も同じ夢を見ました」
「何。そうか。そしたら、その、お地蔵さんは、ここに埋もれているのかもわからんな。とりあえず、長屋の裏庭を掘ってみようか」
さあ、これから、畑仕事で使う、すき、クワでもって、裏庭を掘り返した。しかし、一向に埋もれたお地蔵さんが見つからない。どこに埋もれているのやら。そこで、いたこさんに相談することにしました。
いたこと申しますと、恐山のいたこが有名です。いたこの口寄せと言って、巫女さんが、死者の霊を呼びだして、死者に憑依して、その言葉を語る、これが有名ですね。以前、テレビでマリリンモンローのファンの方が、マリリンモンローを呼び出してほしいと、いたこさんにお願いをした。やがて、いたこさんが、霊を降ろしましたから、ファンの方が、おそるおそる、
「あのー、マリリンモンローですか?」
と聞くと、そのマリリンモンローは、
「んだ」
と青森弁で答えたという。そんな笑い話もございますが、盛岡にも、いたこうさんがいまして、よろず相談所というのか、なんでも、困り事があると、例えば、就職や、縁談、それに、引越をするが、どういう方角がいいかとか、肩がよく凝るがどういうことでしょうか、とか。なんでも、いたこさんに相談する。身近な存在だったようですね。
そこで大家さんと鳥居さんが、お地蔵さんの話をすると、それは三面地蔵尊に違いない。お地蔵さんの顔が三つある、三面地蔵尊。
幕末の頃、このあたりに住む武士の守り本尊だったらしい。ところが、戊辰戦争で、焼けてしまい、混乱の中、武士は亡くなって、三面地蔵尊も土の中に埋もれて、人々から忘れ去られてしまった。大家さんも鳥居さんもそんなお地蔵さんは聞いたことがない。すると、いたこさんが、青森県の十和田山に三面地蔵尊が祀られているので、仏さんを掘る、仏師の方をそれに連れて行って、同じものを作るが良いとアドバイスをくれた。そして、大家さん、鳥居さんは、仏師の方を連れて、十和田山に。すると、本当に、三面地蔵尊があった。仏師の方は、そのお地蔵さんを、模写して、盛岡に帰ってくると、精魂込めて、石を掘って、三面地蔵尊をこしらえた。そうして、現在の場所に祀ったそうです。
やがて、第二次世界大戦のときに、このあたりの若者が戦地へ行く。激戦のさなか、右腕を撃たれて負傷してしまった。すると、三面地蔵尊の右腕もボロっと落ちたそうです。現在も、お地蔵さんの片腕、切れた跡があるというのは、そういう訳だそうです。鳥居さんと、大家さんの子孫の藤村さんも、現在も、この土地に住んでいます。こんな話を教えて頂きました。「三面地蔵尊の由来」の一席。
終わり
担当者コメント