三陸・150kmの郷土芸能

プロジェクト ─2022

TITLE
三陸・150kmの郷土芸能

三陸・150kmの郷土芸能

振付家・ダンサーの鈴木ユキオが宮古市に滞在し、郷土芸能のリサーチや地域交流等を行います。

AREA
宮古市|郷土芸能界隈
ARTIST
鈴木ユキオ Yukio Suzuki(振付家・ダンサー)
鈴木ユキオ Yukio Suzuki(振付家・ダンサー)
YUKIO SUZUKI projects 代表・振付家・ダンサー。世界50都市を超える地域で活動を展開し、しなやかで繊細に、空間からはみだすような強靭な身体・ダンスは、多くの観客を魅了している。モデル、音楽家との共同制作、子供や障害のある方へのワークショップなど、活動は多岐に渡る。 2008年トヨタコレオグラフィーアワード「次代を担う振付家賞」等受賞多数。
http://www.suzu3.com
滞在期間
2022年9月16日(金)~25日(日)、3月15日(水)~19日(日)
内容
振付家・ダンサーの鈴木ユキオが宮古市に滞在し、郷土芸能のリサーチや地域交流等を行います。
主催
NPO法人いわてアートサポートセンター(宮古市民文化会館)
助成
文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)独立行政法人日本芸術文化振興会

滞在地域

宮古市

詳細は下記

森、川、海に囲まれた三陸海岸に面する市、宮古市。
本州最東端の地である「魹ヶ崎」を擁し、世界三大漁場・三陸沖の豊かな漁業資源や、三陸復興国立公園・浄土ヶ浜や早池峰国定公園など、自然環境を背景に漁業と観光に力を入れている。黒森神楽をはじめ、40を超える郷土芸能があるほか、縄文時代の遺跡・崎山貝塚、戊辰戦争の一つ宮古湾海戦の地など歴史が点在している街。

宮古市

イベント

EVENT1

TITLE
鈴木ユキオ ダンスワークショップ カラダと対話するところから生まれるダンス

まずは自分のカラダをどのように意識して、どのような動きが生まれてくるのか、というところから取り組もうと思います。
様々な方法で、カラダに意識を巡らせて、それがそのままダンスになっていく。
そんな過程を一緒に探求していきましょう。
経験者の方も初めての方も、それぞれの自分のペースで自分に向き合う時間です。
「カラダ」という自分自身と向き合う時間を共有できたらと思います。

日時
2022年9月23日(金・祝) 13:30~15:30
会場
宮古市民文化会館 中ホール
マップ
料金
無料
お問い合わせ
宮古市民文化会館
〒027-0023 岩手県宮古市磯鶏沖2-22
TEL:0193-63-2511 FAX:0193-64-5445
iwate-arts-miyako.jp

EVENT2

TITLE
地域リサーチ(前期滞在)

三陸沿岸沿いで活動する郷土芸能団体の稽古の見学や交流などのリサーチを行いました。普代村から陸前高田市までの約150kmを移動。三陸国際芸術祭のイベントを観覧し沿岸各地の郷土芸能を見て体験しました。

日時
9月17日(土)
9月18日(日)
9月21日(水)
9月24日(土)
リサーチ先
9/17 鵜鳥神楽、岩泉高校郷土芸能同好会、喜田七福神
9/18 みやこ秋まつり
9/21 牛伏念仏剣舞
9/24 三陸篝火芸能祭
リサーチ内容
9/17 稽古見学
9/18 イベント観覧
9/21 稽古見学
9/24 イベント観覧

EVENT3

TITLE
「繋いでいく」ということ ダンスワークショップ+ショーイング

「繋いでいく」ということ ダンスワークショップ+ショーイング

チラシを見る

三陸AIRで、岩手の郷土芸能の稽古場を見学し、インタビューなどを行ったダンサー・振付家の鈴木ユキオが、各地でのリサーチで感じたことを報告します。また、一般の方を対象に「対話するところから生まれるダンス」をテーマにしたダンスワークショップを行い、その参加者の皆さんと一緒にショーイングを行いたいと思います。
ワークショップからのご参加も、ショーイングのみの見学も、どちらも多くの皆さんのご参加をお待ちしております。

ワークショップ|概要
「対話するところから生まれるダンス」をテーマに、一緒に身体を動かします。
自分自身の身体や感覚と向かい合うこと。そんなシンプルなことを通して生まれるダンスはまだ誰も見たことがない、あなただけのダンスです。ぜひ一緒にそんな「ダンス」を探しましょう。
そして、ワークショップでやったことを、その後の成果報告会でショーイングとして披露したいと思っています。
もちろん、ワークショップのみのご参加でも大丈夫です。
ワークショップ|詳細
日時:2023年3月18日(土) 13:00~15:00
場所:宮古市民文化会館 中ホール
応募資格:なし(ダンス未経験者大歓迎)
定員:15名程度(定員に達し次第締め切り)
参加費:無料
申込フォーム:https://forms.gle/kEmJS5CVH3227JFE9

当日は上履き・タオル・飲み物をご持参の上、動きやすい服装でご参加ください。
成果報告会|概要
リサーチの報告を行います。
パフォーマンス●カンパニーダンサーを通して《振付・演出:鈴木ユキオ 出演:安次嶺菜緒・赤木はるか・阿部朱里》
ショーイング●ワークショップの皆さんの身体を通して《出演:鈴木ユキオ・ワークショップ参加者》
成果報告会|詳細
日時:2023年3月18日(土) 16:00~18:30
場所:宮古市民文化会館 中ホール
入場料:無料
申込フォーム:https://forms.gle/kEmJS5CVH3227JFE9
マップ|宮古市民文化会館
お問い合わせ
宮古市民文化会館
〒027-0023 岩手県宮古市磯鶏沖2-22
TEL:0193-63-2511 FAX:0193-64-5445
iwate-arts-miyako.jp
主催
特定非営利活動法人いわてアートサポートセンター
助成
文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
企画・制作
宮古市民文化会館
新型コロナウイルス感染症拡大防止対策について
①37.5度以上の発熱、咳やのどの痛み、強い倦怠感などの症状がある方のご来場はお控えください。ご来場の際にはマスクを着用し、公演中もはずすことの無いようにお願いいたします。 ②客席は、舞台からの距離を確保し、客席数を制限しております。 ③空調設備を適切に稼働させ、必要に応じて扉を開放するなど、十分な換気を行います。 ④お花やプレゼント・差し入れはお断りしております。 ⑤チケット販売の際にお伺いした個人情報は当日の受付のほか、新型コロナウイルス感染者が発生した場合にのみ保健所等の公的機関へ提供することがありますのでご了承ください。

映像

「繋いでいく」ということ

公演:2023年3月18日(土)
会場:宮古市民文化会館中ホール

インタビュー

レポート

レポート|鈴木ユキオ

ダンスの世界での活動も長くなってきている今、もう一度自分のルーツでもある「舞踏」について、いま一度考え直してみようと考えていた時に、このレジデンス事業があることを知りました。
私のキャリアは舞踏からスタートしています。そして舞踏は日本で生まれた独自のダンスであり、世界にも多くの影響を与えたものです。
しかし、舞踏がどのように日本の芸能の中から生まれてきたのか、そして日本の芸能はどのようなものがあるのかなど、あまり知らずにこれまで活動をしてきていました。そこで、自分のルーツを知る為にも、ここ2年くらい様々な地域に赴き、郷土芸能や伝統芸能など、いろいろな舞踊の鑑賞を重ねてきました。
三陸地方の芸能の多様性などは知っていたので、ぜひ現地で多くの芸能を見てみたい、そして直接お話も聞いてみたいと思っていましたが、それまでも自分で調べて鑑賞などはしていたものの、個人で調べていくには限界もありますし、より深くに入っていくためには、詳しい方に会ってお話を聞いたり、現地の方に協力してもらわないと難しいなと感じていたので、今回、宮古市民文化会館さんの協力を得て、地域での上演や、稽古している場所にも連れて行ってもらい、お話も聞くこともでき、とても実りのある時間でした。そのおかげで、7つの団体を見学させてもらうことができ、最後には三陸篝火芸能彩でみなさんの晴れ姿を見ることもできました。

末角神楽では、実は実際に舞を習うところまでお話が進んでいたのですが、若い人が習うことが決まり、そちらの指導などで忙しいということで実現しませんでした。残念でしたが、コロナの影響にあり、活動がなかなか思うようにいかない中、明るいニュースということで、嬉しくも思っています。
ここでのお話を聞いた時に、後継者問題がとても切実であるということでした。自然に囲まれた素晴らしい環境なのですが、やはり若い人自体が地元にいない、ここに興味を持って通ってくれる人がいたらいいのだが、ということでした。
その時に「あなたたちは後継をどうやっているんですか?」と逆に質問されたことが、自分自身への問いとなり、リサーチと並行して今の自分にとって「後継」「継いでいく」「繋いでいく」ことはどういうことなのかと考えていく機会になりました。
コンテンポラリーダンスという言葉が割と一般的になり、さまざまな現場で踊ることが多くなっていますが、「コンテンポラリーダンスとは?」そして「そのダンスを継承していくこととは何なのだろうか?」ということは、今まであまり考えたこともなく、自分のルーツを知ろうと始めたこの旅の方向性がこの出来事で定まったような気がします。

鵜鳥神楽においては、若い男の子が小さい頃から神楽が好きでわざわざ遠くから通っているということでした。経験も豊富で、もう一人若い踊り手も加わっていましたが、その彼に、指導することもできるということで、稽古を拝見していても、とても頼もしい感じがしました。ただそこの長老さんからお話を聞くと、人数の多い演目はできないのでそれなりにアレンジして見せたりしていて苦労もあるようです。だんだん上演されなくなっていくことで演目が限られてしまい、徐々に絶えてしまうという現実を見た気がしました。
末角神楽でも「お面はあるし、演目も見たことはあるのだけれど、私たちでももう踊れないんです」というお面がいくつか存在していました。
寂しいけれどこれが現実でもあるのだと思います。

岩手県立岩泉高等学校郷土芸能同好会にもお邪魔しました。中野七頭舞の踊りを若いエネルギーで踊っているのはとても格好よく、見ていてとても気持ちのよいものでした。大会もあり強豪校ということで同好会に入りたくてこの学校にくる子もいるとのこと。ここにきて始めた人もいれば小さい頃からやっていて卒業しても続けていきます、という子もいて、そういう子が指導の中心になっていました。

いろんな継承の仕方があることを感じ、それはとても良いことだと感じています。地域で引き継がれているものを大事にし、家族で参加しながら大人から子供に伝わっていくような、昔ながらの継承もあれば、遠くから通ってでも興味がある人が参加してくれることで繋いでいく方法もある。学校で同好会として、大会などを楽しみに集まっていき、バトンが繋がっていくこともある。
今の時代にあったやり方で模索しながらそれぞれが継承していっているのかもしれません。

喜田七福神舞では子供の演目を大人が踊って見せているということで、見学させてもらいました。とにかく見ているだけで幸せになる踊りで、これは子供が踊ってもとても可愛らしく楽しいだろうなと感じます。今年で大人が踊るのは一区切りということでした。震災などで人もばらばらになったり、道具や衣装なども無くなったりと、不意の出来事で、突然存続の危機に陥ることもあるのだと考えさせられました。それでもこうして大人が率先して集まって子供たちや、地元の人たちに見せていくことで、みなさんに希望を少しでも届けていけたらという気持ちが伝わり、とても感動しました。
「地域のものだから絶やすわけにいかないからね」「仕事で忙しくてもしょうがないからねー」と、なんだかんだと集まる感じは地域のコミュニティーがまだ残っているからなのでしょう。今の時代は、「めんどくさいから、いかなくていいかな」となりがちですが、「大変なこともあるけれど、しょうがないねー」といいながら集まる感じが懐かしくもあり、羨ましくもありました。

牛伏念仏剣舞も地域のコミュニティがしっかりと残っている印象でした。家族で参加していたり、おじいちゃんたちが見守るように隣の部屋に集まっていたり、女の子がお囃子の太鼓を叩いていたり、とてもアットホームな中で継承されている感じでした。

地域の芸能をよくご存知の、宮古市教育委員会市史編纂室の假屋さんにもお会いすることができ、神楽などの郷土芸能を俯瞰した意見をお聞きできました。印象的だったのは「継承」に関して、ただ後継者不足というだけでなく、元々は「自分たちの技術を外に出したくない」という競争意識やプライドがあったからということもあるのではないか。他地域との交流もそんなになかっただろうし、見学などもできなかった。そこにきて、震災や過疎問題なども重なり、繋いでいくことが難しくなっているのではないかというお話でした。

ただ広く残す、つなぐのがいいわけではないとも思うし、誰に何を残していくのか、本質をきちんと伝えていければ、これまでとは違うやり方の可能性もあるのかもしれないし、時代によって変化していくものでもある。新しい演目を作るということに挑戦する人も出てくるかもしれない。

今回のリサーチを通して、自分にとって何を引き継いできたのか、そして何をどのように継承していけるのかを考えるよい機会になりました。

最後にはワークショップ参加者に私の振付を踊ってもらったり、メンバーにも作品を踊ってもらい、参加者、見学の方たちにみてもらうこともできました。自分なりの伝え方を模索しながら、伝えること、繋いでいくことをしていけたらよいなと感じています。

私にとっては、形式として伝わっていくことよりも、私の踊り、方法、思考の本質が伝わっていくことが重要であるのだなと感じてます。そしてそれはいつか血となり肉となり形を変えて残っていくものなのかもしれないと感じています。

このような機会をいただきじっくりと滞在して考え、リサーチなどをできるレジデンスはとても意義のあるものでした。
地元の方たちの生活と芸能を知ることができ、参加してくれたワークショップの方たちとの交流など2週間あったことで時間をかけてできたことだと思っています。今日明日で何かが変わったり生まれたりするものではないとは思いますが、このようなレジデンスで様々な方がここを訪れ、交流を重ねることでいつか、いつの間にか何かが生まれたり変化が起きていくのだろうと感じます。今後もここでどのような方がどんなことをしていくのかとても楽しみにしています。

担当者コメント

夏、秋のお祭りの練習に併せて三陸地域を南北に駆け抜けた滞在は、普段見ることのない地域の芸能をリサーチすることができ、わたしたちにとっても大きな収穫でした。特に今回ユキオさんがリサーチの視点としてあげた「継承・伝承」は三陸地域の郷土芸能団体各所で抱えている問題でしたので、改めて簡単には解決できない深刻さを知ったほか、取材させていただいた団体の継承への熱意に圧倒されました。
ワークショップでの体験や成果発表でもユキオさんの言葉のひとつひとつに耳を傾ける参加者の姿勢がとても印象的で、舞踏・舞踊への認知を広げることのできた滞在になったと感じました。

宮古市民文化会館
大原

  • NPO法人いわてアートサポートセンター(AIR/AIR担当)
  • 〒020-0874 岩手県盛岡市南大通一丁目15-7 盛岡南大通ビル3階
  • TEL:019-656-8145 FAX:019-656-8146
CONTACT