自然と共鳴する心

プロジェクト ─2024

TITLE
自然と共鳴する心

自然と共鳴する心

自然環境と人間の内面世界の関係性を探り、メディアアートで橋渡しをする
Teru Kawakita is staying in Miyako City, Iwate Prefecture (Japan), as part of an artist-in-residence program. He is exploring the relationship between nature and the human mind and bridging the two through media art.

AREA
宮古市
ARTIST
川北 輝 Teru Kawakita(メディアアーティスト)
川北 輝 Teru Kawakita(メディアアーティスト)
メディアアーティスト、感性工学者、公認心理師、松山東雲短期大学 助教。1998年生まれ。北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術専攻 創造社会デザイン研究領域でアバターのデザインをテーマに修士 (知識科学) を取得。映像技術をはじめ、AIやVRなどのテクノロジーを活用し、心や感性に関するメディアアート制作/研究を行う。「第3回 デジタルとくしま大賞『港産業 ロボット・DX推進賞』および『大賞』」、「令和5年度 北方領土動画コンテスト 優秀賞」、「第23回 日本感性工学会大会 優秀発表賞」など、芸術や研究関連の受賞多数。ACM、IEEE、日本感性工学会などの正会員。

Biography: Teru Kawakita is a media artist, researcher, Certified Public Psychologist, and Assistant Professor at Matsuyama Shinonome Junior College. Born in 1998, he holds a Master's degree in Knowledge Science from the Japan Advanced Institute of Science and Technology, where he engaged in avatar design. Kawakita specializes in Kansei/Affective Engineering and Human-Computer Interaction. He leverages cutting-edge technologies such as AI and VR to conduct research and create media art that explores the human mind. His work has received numerous awards in both artistic and academic fields. Kawakita is an active member of several professional organizations, including ACM, IEEE, and the Japan Society of Kansei Engineering.
滞在時期
8月27日〜9月2日、2月5日〜11日
内容
自然環境と人間の内面世界の関係性を探り、 メディアアートで橋渡しをします。
主催
特定非営利活動法人いわてアートサポートセンター
企画製作
宮古市民文化会館
助成
文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業(地域の中核劇場・音楽堂等活性化事業))|独立行政法人日本芸術文化振興会

滞在地域

宮古市

詳細は下記

森、川、海に囲まれた三陸海岸に面する市、宮古市。
本州最東端の地である「魹ヶ崎」を擁し、世界三大漁場・三陸沖の豊かな漁業資源や、三陸復興国立公園・浄土ヶ浜や早池峰国定公園など、自然環境を背景に漁業と観光に力を入れている。黒森神楽をはじめ、30を超える郷土芸能があるほか、縄文時代の遺跡・崎山貝塚、戊辰戦争の一つ宮古湾海戦の地など歴史が点在している街。

宮古市

イベント

EVENT1

TITLE
グラフィックデザインソフトを活用した映像制作

宮古市内の中学生に向けて、メディアアートを活用したアウトリーチを行います。

日時
2024年8月27日(火)
会場
宮古市立新里中学校

EVENT2

TITLE
生成AIでコラージュ作品をつくろう

宮古市内の小学生に向けて、メディアアートを活用したアウトリーチを行います。

日時
2024年8月29日(木)
会場
宮古市立千徳小学校

EVENT3

TITLE
生成AI×手づくり写真 —未来を重ねる青の世界—

宮古市内の小学生に向けて、メディアアートを活用したアウトリーチを行います。

日時
2025年2月6日(木)
会場
宮古市立磯鶏小学校

EVENT4

TITLE
川北輝のメディアアート展inMIYAKO

川北輝のメディアアート展inMIYAKO

チラシを見る

光や音、コンピュータなどのメディアを活用し、アーティストの世界観を表現したアートです。メディアというように、人と人をテクノロジーで結ぶ作品や人とコンピュータの関係性に着目した作品が特徴です。例えば、音を鳴らすと映像が変化する作品、コンピュータを操作すると空間を移動できる作品などがあります。作品を見るだけでなく、「触ったり、動かしたり」して、子どもも大人も楽しむことができます。

日時
2025年2月8日(土)、9日(日)、11日(火祝)
10:00〜17:00 ※最終日は16:00まで
会場
宮古市民文化会館 展示室
チケット
【発売開始:1月8日(水)〜】
500円
*未就学児入場無料
*WEB予約は宮古市民文化会館HPへ
プレイガイド▶︎宮古市民文化会館、かんの書店本店
問合せ
宮古市民文化会館
TEL:0193-63-2511

EVENT5

TITLE
アーティストトーク①「デジタルで感じる宮古の魅力-子どもの感性を育む地域のメディアアート-」

本展示の作品紹介や宮古市におけるAIR活動をお話します。メディアアートは光や音、映像など多様な表現があるため、子どもたちの五感を刺激し、新たな驚きや発見をもたらしてくれます!

日時
2025年2月8日(土)14:00〜14:30
会場
宮古市民文化会館 中ホール
参加情報
無料、要予約、未就学児入場可

EVENT6

TITLE
アーティストトーク②「AIってどう使う?家庭で始めるデジタル時代の教育」

AIを家庭内で子どもの教育に活用するためにはどうすれば良いのでしょうか 。デジタル時 代に必要となる新たな教育方法を紹介します。

日時
2025年2月11日(火・祝)14:00〜14:30
会場
宮古市民文化会館 中ホール
参加情報
無料、要予約、未就学児入場可

EVENT7

TITLE
ワークショップ「宮古の自然素材で写真を手づくりしよう!」

小学生向けのワークショップです。宮古市の植物や貝殻などを用いて、紫外線を当ててプリントするサイアノタイプという青写真を手づくりして みましょう!

対象
小学生(1〜6年生)
日時
2025年2月9日(日)①11:00〜12:00 ②15:00〜16:00
会場
宮古市民文化会館 会議室
参加方法
無料、要予約(各回定員10組)、未就学児入場可
新型コロナウイルス感染症拡大防止対策について
①37.5度以上の発熱、咳やのどの痛み、強い倦怠感などの症状がある方のご来場はお控えください。ご来場の際にはマスクを着用し、公演中もはずすことの無いようにお願いいたします。 ②客席は、舞台からの距離を確保し、客席数を制限しております。 ③空調設備を適切に稼働させ、必要に応じて扉を開放するなど、十分な換気を行います。 ④お花やプレゼント・差し入れはお断りしております。 ⑤チケット販売の際にお伺いした個人情報は当日の受付のほか、新型コロナウイルス感染者が発生した場合にのみ保健所等の公的機関へ提供することがありますのでご了承ください。

映像

インタビュー

レポート

レポート|川北輝

宮古市への旅

愛媛県から岩手県宮古市へ。日本列島を縦断する長い旅だった。
朝早くに出発しても、宮古市にたどり着くころにはすっかり日が暮れていた。移動の途中で、車窓から見える景色は少しずつ変わり、瀬戸内の穏やかな海から、奥深い山々へ、そして東北の広大な空とともに宮古市の美しい海へと導かれた。

飛行機、新幹線、バスを乗り継ぎながら、この土地の空気を肌で感じる時間は、すでに「旅」そのものがインスピレーションになっていた。宮古市に降り立ち、潮の香りを感じたとき、僕の幼少期の記憶がふわりとよみがえった。広島の瀬戸内の海に似た風景。少年時代の記憶が遠く離れたこの地で鮮やかに蘇る。

前期滞在中は台風10号の影響で曇りの日が続いた。しかし、曇りのすき間から見える青空はとても美しく、光が三王岩の海に反射したときは、まるで青の世界が広がっていた。

 

アウトリーチ活動

滞在期間中、地域の子どもたちとアートを通じて交流する機会を得た。小学校では、「画像生成AIとコラージュを組み合わせた表現の授業」を行った。
子どもたちは、デジタルとアナログが交わる表現に驚きながらも、自分だけの物語をつくり出していた。AIが生み出したイメージを切り貼りし、そこに新たな意味を見出す過程は、人とAIが共創することを体験する時間だったと思う。

また、「サイアノタイプ(古典的な青写真の印刷技法)とAIを組み合わせる授業」も実施した。
青く染まる世界の中に、みんなの発想が広がっていく。最初は「AIって何?」という感じだった子どもたちも、いざ作業を始めると、どんどんアイデアが湧いてきて、「こんなのつくってみたい!」と夢中になっていた。現代技術と伝統的な手法を掛け合わせることで、新しい可能性が生まれることを実感した。藍色に染まる紙の上に、AIが導き出した画像を重ねる様子は、まるで過去と未来が交錯するような感覚を呼び起こした。

中学校では、「AIを活用した映像表現の授業」を行った。 実際にプロンプトを入力して画像を生成し、それを映像として動かすと、生徒たちの目が輝き始めた。きっと、新しい技術が手の届くものとして感じられた瞬間だったのだと思う。「すごい!」、「どうやったの?」と興味津々で、最後には「もっとやりたい!」という声も上がった。短い時間ではあったが、未来のクリエイターが生まれるかもしれない、なんて思いながら、僕はみんなのワクワクした顔を見ていた。


川北輝のメディアアート展 in MIYAKOの展示作品「宮古の青とゆらぎ」 画像左は宮古市の素材をもとにした手づくりのサイアノタイプ (青写真)、画像右はサイアノタイプを動画生成AIで動的に動かした作品。

 

宮古市の自然と文化に触れる

リサーチの一環として、「学ぶ防災」のフィールドワークで田老地区を訪れた。巨大な防潮堤が語る歴史と、それを乗り越えてきた人々の強さを肌で感じた。津波の爪痕が残る場所に立ち、命を守ること、地域を守ること、歴史を紡ぐことの意味を深く考えさせられた。
一方で、宮古の自然は圧倒的な美しさだった。浄土ヶ浜の透き通るような海、堂々とそびえ立つ三王岩、そして美しい川。特に水の流れには心を奪われた。僕の名前には「川」が入っている。子どもの頃、川で遊ぶことが大好きだった。水の冷たさ、流れる音、その先に海があることへの不思議な感覚。なぜ泡が生まれて、自然に消えるのか。それらが、この宮古の地で鮮明に思い出された。だから、「ゆらぎ」をテーマの一つにした。ぜひ浄土ヶ浜の水面を一度じっくり観察してみてほしい。

宮古市は食も最高だった。宮古の市場で食べた海鮮がとにかく絶品!
ウニ、ホタテ、サーモン、どんこ……どれも新鮮そのもので、一口食べるたびに「うまっ!」と声が出た。こういう地域の味を楽しむのも、滞在の醍醐味だなぁとしみじみ感じた。それらの味は、ただの食事ではなく、海と人のつながりを感じさせる体験だった。何気ない食事の中に、この土地の歴史と文化が息づいているように思えた。宮古の瓶ドンは本当に良いアイデアだ。

さらに、神社では例大祭を見せてもらい、その神聖な雰囲気に圧倒された。伝統的な舞や太鼓の音が響く中、地域の人たちのエネルギーを感じることができた。北上山地民俗資料館では地域の文化や風習を学び、岩手県立水産科学館では宮古の豊かな海とその生態系について理解を深めた。宮古の歴史や文化にどっぷりとひたった有意義な時間だった。


川北輝のメディアアート展 in MIYAKOの展示作品「塩焼 —2025— (左)」、「トロロコンブ (真)」、「宙に浮く回転寿司 (右)」 宮古市での体験からインスピレーションを受けて、制作した作品。

 

川北輝のメディアアート展 in MIYAKO

これらの体験を通じて、展覧会のテーマが明確になった。
宮古市には、僕の子どもの頃の記憶と重なるものが数多くあった。それは、青く広がる海、自然の温かさ、土地に根付く文化、人々の暮らし。そして、ワクワクするような発見の瞬間。僕の少年時代の記憶もリンクさせているので、「子どもから大人まで楽しめるメディアアート展」を目指して、作品制作に没頭した。
最終的には、いろいろな要素をもとに、20以上のメディアアート作品を展示することができた。

展覧会では、宮古市の自然と、そこに宿る記憶の断片をメディアアートとして再構築することを目指した。青い光が波紋を生み、触れるたびに揺れる動き、ランダムな変化の中にある偶然の美しさ。観る者が自身の記憶とリンクし、新たな感覚を呼び覚ますような空間をつくりたかった。宮古の美しさは、単に景観としての美しさだけでなく、そこにある時間や空気、人の営みとともに存在している。そのことを作品に込めることで、ここで感じた「好き」の記憶を共有できるのではないかと考えた。

展示空間は、波の動きを取り入れたインタラクティブな作品を中心に構成した。青の波がゆらぎ、観る人の刺激に応じて映像が変化する。まるで宮古の海や川の流れのように、常に変化し続ける作品。僕は人とテクノロジーの関係性について幅広く研究しているので、メディア・テクノロジーと宮古の自然を組み合わせて表現すると、「こんなにワクワクできる!」ということを多くの人に感じてもらいたかった。

訪れた人々が作品の前で立ち止まり、自分の中に眠る記憶と向き合う姿を見たとき、この場所に展覧会を開いてよかったと心から思った。特に嬉しかったのは、会場で「これ、またやってほしい!」という声を聞けたことだ。準備は大変だったけれど、たくさんの人に楽しんでもらえたことが何よりも嬉しかった。

展覧会に合わせて、アーティストトークやワークショップも開催した。
特に印象に残っているのは、宮古の自然素材と画像生成AIとサイアノタイプを組み合わせて、オリジナル作品をつくっていた少年だった。木の実とカニの足を上手く使って、本物のカニのようにプリントしていたのが素晴らしかった。 宮古市での滞在では、100人を超えるたくさんの子どもたちと触れ合い、僕自身、多くのことを教わった。ここから、未来のメディアアーティストが生まれたらとても嬉しい。


ワークショップで少年がつくった「カニ」のサイアノタイプ (左) と緑茶で洗浄した作品 (右)。子どもたちとメディアアートの可能性は無限大!

 

宮古と僕

宮古市での滞在は、僕にとって大きな意味を持った。この地で感じたすべてが新たな創作の糧となった。水の流れのように、記憶は過去から未来へと続いていく。この展覧会や宮古市での関わりが、波紋のように広がって、ゆらぎ、また誰かの思いに共鳴することを願っている。

最後に、宮古市民文化会館の皆さまにはいつも助けていただき、大変お世話になりました。
ここに感謝の意を表します。ありがとうございました!

メディアアーティスト
川北輝

担当者コメント

滞在中に川北さんが何度も強調されていた「インタラクティブ(相互作用性)」という言葉が、メディアアートの大きな特徴であり、重要な要素なんだと強く感じました。
担当になるまでは「メディアアート」という分野に馴染みがなく、まずはその概念を理解することから始まった一年でした。少しずつ分かってきたかなと思ったところで展示会の準備が始まり、さらに疑問が湧いてきて、知れば知るほど興味が深まっていきました。
展示会当日、家族連れで楽しんでいる様子を見て「開催してよかったな」と改めて実感しました。作品を見たお客さんの想いや動きによって作品自体が変化し、その変化した作品を見たお客さんがさらに何かを感じ取るというループこそが新しいアートの楽しみ方であり、それをご来場の方々に体験していただけて光栄に思います。

宮古市民文化会館
佐野

  • NPO法人いわてアートサポートセンター(AIR/AIR担当)
  • 〒020-0874 岩手県盛岡市南大通一丁目15-7 盛岡南大通ビル3階
  • TEL:019-656-8145 FAX:019-656-8146
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